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妻夫木聡の映画「春の雪」

妻夫木聡の映画「春の雪」

三島由紀夫という大作家の映画に挑んだ妻夫木聡くん。

何と言いましょうか、三島由紀夫が描く登場人物というのは「春の雪」に限らず、大変際どい登場人物がほとんどなのです。

全うに見える人間の影や、屈折しきったような人間から発する光みたいな、すんなりいかない人物が多いのです。

今回の妻夫木くんの役も、とにかくやっつけ仕事ではこなせる訳もない難しい役なのです。

竹内結子さん演じる女性から恋心を抱かれるのですが、彼女に婚約者が浮上しても本当の思いを彼女に打ち明けません。簡単にいうならば致命的な天の邪鬼です。

しかし抑えきれない思いがもう手遅れという時に爆発してしまうのです。

純愛ラブストーリーと唱われてプロモーションされたこの作品ですが、それよりも妻夫木くんがこの役を演じたことによって、割腹自殺をした三島由紀夫という人間の影までも、多分この作品に込めたのであろう三島由紀夫の思いを妻夫木くんが映像でもって写しだしたように思えました。

妻夫木くんがアイドルではなく、俳優なのだと証明付けた作品でもあります。

ラストのシーンで妻夫木くんは風邪を拗らせて肺炎になってしまいます。その咳きの音があまりにもリアルで、苦しそうで、映画館中に響き渡ったその咳きに誰もが彼女への愛情の執着心を痛いぐらいに感じとった事でありましょう。

もし、三島由紀夫がまだ生きていたならば、妻夫木くんと深い話もできていたのかもしれませんね。